2020年のカード決済サービス概観

「2020 Cashless Japan」に向けた決済サービス概観
安心・安全な日本に向け、多くの決済サービス・セキュリティ対策が提供される

2020年の東京五輪に向け、国内でもさらにキャッシュレスな決済が加速していくと思われる。また、カード決済環境の整備による地方創生も期待される。それと同時に、安心・安全な決済インフラを整えることも重要だ。まずは、国内の主要な決済やセキュリティ対策について概観したい。

 

国内でも非現金化は年々進む
インバウンド対応も進められる

 

国内でも後払いの「クレジットカード」、前払いの「プリペイドカード」、即時払いの「デビットカード」のすそ野は順調に広がっている。例えば、クレディセゾンの2015年第2四半期決算発表資料によると、2014年度の民間最終消費支出285.7兆円に占める「現金」の割合は51.9%。「クレジットカード」は15.0%、デビットカードは0.2%、プリペイド・電子マネーは4.7%となっている。前年比で、クレジットカードは+1.2%、プリペイド・電子マネーは+0.9%となっているように、順調に市場規模は拡大している。

▲2014年度の日本の個人消費に占める決済 手段別シェア(クレディセゾンの2015年第2 四半期決算発表資料) 経済産業省、ニューペイメントレポート、三菱 UFJリサーチ&コンサルティング、各社・各協会 公表資料等よりクレディセゾン独自推計

▲2014年度の日本の個人消費に占める決済手段別シェア(クレディセゾンの2015年第2四半期決算発表資料) 経済産業省、ニューペイメントレポート、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、各社・各協会公表資料等よりクレディセゾン独自推計

クレジットカードに関しては、これまで利用が限定的だった新領域での導入も進んできた。例えば、従来、口座振替や振込が多かった家賃、公金、医療、教育などでカード決済を導入するケースが見受けられる。

 

また、インバウンド対応での決済環境の整備も加速。日本政府観光局の発表によると、2015年の訪日外国人旅行者数は約1,974万人、2016年は2,350万人程度まで伸びると予測されており、2020年までの3,000万人達成も見えてきた。

 

2014年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂では、①訪日外国人向けの利便性向上、②クレジットカードなどを消費者が安全に利用できる環境整備、③公的分野の効率性向上の観点から電子決済の利用拡大――からなる、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性向上を図るための対応策が取りまとめられた。

 

一方で、海外では「日本ではクレジットカードに頼らないことが得策であり、現金を持って歩くのが基本原則」と報じられたように、日本ではクレジットカード決済が利用できない店舗も多い。その対応として、都市部だけではなく地方での決済環境を整備するために、地方創生予算を活用して決済端末導入補助の取り組みが行われている。

 

インバウンド対応として、「UnionPay(銀聯)」決済の導入も進んでいる。銀聯は、2002年の設立以来、急成長している国際カードブランド。加盟店は、中国が1,700万カ所、中国国外が1,700万カ所となり、うち日本は約40万カ所となっている。現在、利用可能国は150カ国以上、カード発行国数は40カ国。加盟店によっては、銀聯カードの利用単価が他のカードよりも高い傾向が表れている。

 

ブランドデビットの認知が進む
地方銀行では、スマートフォンと連携したサービスも

 

デビットカードは、加盟店での決済時に金融機関の預金口座を照会し、即時に引き落とすカードサービスである。国内では、日本デビットカード推進協議会が運営する「J-Debit」のほかに、VisaやMasterCard、JCBなど、ペイメントカードの国際ブランドが提供する「ブランドデビット」がある。

 

ここ数年は、VisaのテレビCMの効果などもあり、国際ブランドが提供するブランドデビットへの注目が集まっている。ブランドデビットは、VisaやMasterCard、JCBの加盟店網を利用し、世界中の加盟店で利用できるのが第一点。また、カード発行時は、原則として審査・与信がなく、クレジットカードを持てない若年層、高齢者なども所有可能だ。クレジットカードは使いすぎのリスクがある等の理由で持ちたくない、また何らかの理由で持てない人もいるが、ブランドデビットは幅広い加盟店で、現金と同じ感覚で利用できるメリットを訴求しているイシュアも多い。

 

ブランドデビットの発行は、当初はネットバンクが中心だったが、メガバンク、地方銀行などでも発行が進んできた。また、福岡銀行や北國銀行など、スマートフォンアプリと連携し、生活密着型のサービスを掲げる銀行も出てきた。

▲ファミリーマートとジャパンネット銀行は、ファミリーマートの「ファミマTカード」とジャパンネット銀行の「Visaデビット付キャッシュカード」の機能を一体化した「ファミマTカー ド(Visaデビット付キャッシュカード)」を発行(ファミリーマート/ジャパンネット銀行)

▲ファミリーマートとジャパンネット銀行は、ファミリーマートの「ファミマTカード」とジャパンネット銀行の「Visaデビット付キャッシュカード」の機能を一体化した「ファミマTカード(Visaデビット付キャッシュカード)」を発行(ファミリーマート/ジャパンネット銀行)

地方スーパーマーケットにも広がり始めたプリペイドカード
リアル店舗で利用できるブランドデビットの種類も増加

 

サーバ管理型のプリペイドカードは、オンライン上のサーバでバリューを管理しネットワーク経由でサーバにアクセスし、金額をチャージ(入金)する仕組みだ。

 

近年では、自社独自の「ハウス電子マネー」として発行を強化するケースが増えている。ハウス電子マネーの利用者は、非利用者よりも来店回数が多い企業が多く、月間の買い上げ金額アップに貢献している。つまり、来店回数が多い優良顧客を中心に積極的に利用されている傾向にある。

また、テレビCMでも見かけるようになった、「POSA(InComm’s Point of Sales Activation)」をはじめ、顧客のカード購入と同時にPOSレジでカードに金銭的価値の付与、カード発行企業の販売網の構築、販促施策の実施などを行う「ギフトカードモール事業」は家電量販店、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどですっかり定着した。

 

ブランドプリペイドを発行するカード会社も増えてきた。ブランドプリペイドは、ブランドデビット同様にVisaやMasterCard、JCBといった国際ブランドのネットワークをそのまま活用できるのが特徴だ。2013年までは、「バニラVisa」、「V@PreCa」、「e-さいふ」など、インターネット上での利用、海外のみで利用できるカードが中心だったが、リアルでもネットでも利用できるKDDIの「au WALLET」開始のインパクトは大きかった。また、2015年以降も「アクアカード」(コメリ)、「ソフトバンクカード」(ソフトバンク・ペイメント・サービス)、「EPiCA(エピカ)」(遠州鉄道)、「ANA VISAプリペイドカード」(全日本空輸)など、カード会社と連携してブランドプリペイドを発行するケースが見受けられる。

▲KDDIが2014年5月から発行している「au WALLET カード」

▲KDDIが2014年5月から発行している「au WALLET カード」

▲東京都・新宿エリア、北海道・札幌エリアでは、 リアルタイムに残高を管理する「JCBプレモ カード」で訪日外国人旅行者の滞在中の移動 情報と決済情報を解析する実験を実施(JTB/ NTT/JCB/JSTO)

▲東京都・新宿エリア、北海道・札幌エリアでは、リアルタイムに残高を管理する「JCBプレモカード」で訪日外国人旅行者の滞在中の移動情報と決済情報を解析する実験を実施(JTB/NTT/JCB/JSTO)

少額決済で多く利用される電子マネー
ポストペイはドコモ、JCBが力を入れる

 

非接触電子マネーの動向をみると、楽天の「楽天Edy」、セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco」、イオンの「WAON」、「Suica」等の交通系電子マネーには、ソニーの「FeliCa」カードが採用されている。「WAON」と「nanaco」は、ポイントサービスなど、グループの販促活動にも有効活用することで、利用が伸びている。「楽天Edy」でも「楽天スーパーポイント」を絡めた販促施策を積極的に展開。「Suica」は、全国展開しているチェーン店、ゲーム機、機内販売、観光地などに代表される新しい領域への営業を強化しているという。

 

近年では、地域のプレミアム商品券をカード型で展開するケースもある。将来的には、ICカードのマルチアプリケーションを生かし、決済以外の領域へのさらなる活用も期待される。例えば、一部の交通系カードやWAONカードには複数のアプリケーションを搭載可能な「FeliCaポケット」の機能が搭載。香川県高松市の「めぐりんWAON」ではさまざまな用途に利用されている。

 

また、ポストペイ(後払い)電子マネーの「iD」「QUICPay」にもFeliCa技術が採用されている。ドコモでは、2015年12月1日から、ポイントを貯める・使うための専用カード「dポイントカード」を発行し、共通ポイントサービスを開始した。また、ドコモの提供するクレジットサービス「DCMX」をリニューアルし、dポイントカードにクレジット決済機能を搭載した「dカード」(ブランドはVisa/MasterCard)の受付を11月20日からスタート。クレジット機能を搭載した「dカード」には、「iD」の機能も搭載した。dカードは、「iD」加盟店でも利用できるため、「iD」の活性化にもつながると思われる。また、バークレーヴァウチャーズの電子食事カード「Ticket Restaurant Touch」(チケットレストラン タッチ)では、ポストペイ方式で推進してきた「iD」を、プリペイド方式にも対応可能とした。これにより、各企業が独自に発行していたプリペイドカードを「iD」の技術を用いて発行できるようになる。

 

JCBでは、2011年下期から「QUICPay」の発行を再強化しているが、会員残高、売り上げ、利用件数は着実に伸びているそうだ。特に、利用件数や稼働会員数などは想定の2倍程度伸びを示しているという。JCBでは、エクソンモービルの「Speedpass+」、ANAの「ANA QUICPay+nanaco」など、異形状の「QUICPay」を発行することで、会員の携帯率を高め、モバイルと同様に常に肌身離さず持ってもらう取り組みを行っている。

主要電子マネーの現状

主要電子マネーの現状

▲クレジット機能を搭載したdカードは、NTTドコモが提供する非接触決済サービスである「iD」の機 能も搭載

▲クレジット機能を搭載したdカードは、NTTドコモが提供する非接触決済サービスである「iD」の機
能も搭載

▲JCBは、「EXILE」などが所属するLDHと提携し、オリジナルデザインのQUICPay「EXILE TRIBE QUICPay(コイン型)」を発行

▲JCBは、「EXILE」などが所属するLDHと提携し、オリジナルデザインのQUICPay「EXILE TRIBE QUICPay(コイン型)」を発行

 

国際ブランドがグローバルに提供する決済サービス
三井住友カードやオリコがNFCモバイルペイメントを提供

 

国際ブランドが提供する非接触決済サービスの動向をみると、Visaでは、「Visa payWave」を提供している。Visa payWaveは、2015年6月時点において68カ国で利用可能だ。米国では2014年のEMVコンタクトレス対応端末の普及台数は22万台強だったが、最近200万台の設置を突破するなど、対応環境が整備されてきた。日本でもインバウンド需要の拡大に向け、世界各国で普段使いの決済が望まれるとみている。国内では、オリエントコーポレーション(オリコ)やジャックスから、搭載のクレジットカードが発行されている。また、住信SBIネット銀行や北國銀行発行のブランドデビットにも機能が搭載される。

▲ N F C スマートフォンによる「Visa payWave」利用イメージ

▲NFCスマートフォンによる「Visa payWave」利用イメージ

一方、MasterCard Contactless(旧 MasterCard PayPass)は、2015年7月時点で世界70カ国300万カ所以上の店舗・施設で利用することが可能だ。日本においては業界に先駆けて、カード会員にとって利便性の高い支払手段を提供するため、2006年4月より複合型商業施設イクスピアリ(千葉県浦安市)で対応端末を導入。また、オリコやジャックスから搭載のクレジットカードが発行されている。

 

日本では、モバイルを活用した動きも始まっている。三井住友カードは、2015年2月から、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、Visaと協力して、NFCを搭載した「おサイフケータイ」対応スマートフォンに対応した非接触IC決済サービス「Visa payWave」の発行を行っている。

 

同社では商用化に向け、2014年3月から500名のモニター会員を募り、先行してVisa payWaveの発行を開始した。モニターの中には日常でおサイフケータイを利用している人が多く、海外でも同様に使えて便利、という声が多かった。Visa payWaveは、国内の加盟店がまだ少ないため、利用が限定される部分はあるが、会員数は、毎月着々と伸びているそうだ。

 

また、国内で最初の商用NFCサービスとなったオリエントコーポレーションの「Orico Mobile Visa payWave」は、今後の成長も見込んでローンチに至ったという。サービス開始にあたっては、「おサイフケータイ」によるモバイルサービスを提供した時のノウハウがあったことと、古くから研究を進めていたため、運用面で大きな苦労はなかったそうだ。現状のモバイル対応のコストは、「おサイフケータイ」でのカード発行時と比べて、それほど大きな差はないとしている。今後のMasterCard ContactlessおよびVisa payWaveの展開については、提携カードとセットで加盟店開拓を進めれば、相乗効果で利用されると期待している。また、モバイルでの発行に関しては、「HCE(Host Card Emulation)」をベースとしたモバイルペイメントへの移行を視野に入れているということだ。HCEは、NFCモバイルペイメントにおける携帯キャリアというスキーム上のハードルと、SIM(Subscriber Identity Module Card)やSE(Secure Element)といった技術的なハードルを取り払うソリューションとして注目されている。

 

JCBでもQUICPayで培ったノウハウを活用しながら、HCEやトークナイゼーションを活用したサービスを構築しているという。なお、トークナイゼーションは、デバイスごとにユニークな番号、すなわちトークンを発行することによりセキュリティレベルを高めるソリューションであり、EMVCoで2年前から標準化作業が進められている。

 

そのほか、Appleの「Apple Pay」、サムソンの「Samsung Pay」、Googleの「Android Pay」といったグローバルプレイヤーが提供する決済サービスの広がりも期待される。

 

モール事業者のID決済サービスが注目を浴びる
Amazonが「Amazonログイン&ペイメント」を国内で提供

 

モール事業者のID決済サービスも注目を集めている。数千万人のユーザーを有しているサイトも多く、その会員をそのまま送客できる。また、クレジットカード番号等を入力する必要なく、IDとパスワードのみで簡単に支払いが行える点も特徴となる。「楽天ID決済」は「楽天スーパーポイント」、「Yahoo!ウォレット」は「Tポイント」、「リクルートかんたん支払い」は「Pontaポイント」といった汎用性の高いポイントが付与されるメリットも魅力となっている。

 

国内のモール事業者のID決済でもっとも利用が多いと言われる楽天では、「楽天ID決済」を、これまで楽天の“準経済圏”拡大を担う手段として展開してきたが、2015年以降は楽天外部でもオープン戦略として強化している。

▲楽天は、ショッピングカートとの連携など、楽天ID決済を強化

▲楽天は、ショッピングカートとの連携など、楽天ID決済を強化

総合オンラインストアAmazon.co.jpにおいては、2015年5月11日から、外部ECサイトでAmazon.co.jpのアカウントでログインし、支払いができるサービス「Amazonログイン&ペイメント」を提供開始した。サービス開始から半年強が経過したが、初動は海外でのスタート時を上回っており、同社ではさらに国内でのサービス導入が広がると感じ取っているようだ。「Amazonログイン&ペイメント」は、同サービスを導入しているECサイトにAmazon.co.jpのIDとパスワードでログインすることで、Amazonのアカウントに登録されている配送先住所やクレジットカード情報を利用できるのが特徴となる。

 

また、LINEの「LINE Pay」も外部ECサイトでの利用が可能だ。LINEでは、2016年春からリアルの店舗でも「LINE Pay」が利用できるサービスを開始する予定だ。

 

ID決済サービスを世界中で展開しているコマース企業としては、ペイパル(PayPal)が有名だ。現在、PayPalは 203の国と地域で、100通貨以上での決済、57通貨で銀行口座への入金、26通貨での支払いの受け取りが可能なサービスして、1億7,900万人および 1,000万のビジネスが世界中で利用している。日本でも中小や越境取引に取り組む企業等の利用が多いという。

 

国際ブランドのチェックアウトが世界で広がりを見せる
国内ではユーシーカードが「MasterPass」を提供開始

 

MasterCardでは、デジタル決済サービス「MasterPass(マスターパス)」を提供。世界各国の25万の加盟店で使用でき、アジア太平洋地域では9つの市場でサービスを開始している。また、「MasterPass」はオンラインのチェックアウトなどを中心にサービスを展開してきたが、今年度の後半に対面の非接触決済のサポートを開始する予定だ。「MasterPass」は、金融機関(イシュア)から消費者へサービスを提供するだけではなく、コーヒーを注文するなど、スムーズな支払いが選べるように、アップグレードしていく。国内では、ユーシーカードが「MasterPass」のサービス提供に力を入れている。

▲MasterCardは「MasterPass」の国内展開に力を入れる

▲MasterCardは「MasterPass」の国内展開に力を入れる

また、Visaでは、「Visa Checkout」をオーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、チリ、中国、コロンビア、香港、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、南アフリカ、アラブ首長国連邦、アメリカ合衆国の世界16カ国で提供している。サービス開始から1年半の2016年1月には、「Visa Checkout」の登録会員数は1,000万人を突破し、提携契約を結んだ金融機関は世界16か国の600社に及んでいると発表している。なお、国内では「Visa Checkout」は提供されていない。

 

2020年までのICクレジットカード化100%が目標に
米国、韓国などでもEMV化が進む

 

リアルでの不正利用対策においては、カード会社のカードのIC化対応、加盟店のPOSや決済端末のEMV対応が挙げられる。日本では銀行系カード会社を中心に2001年から、磁気カードにICチップを搭載する動きが広まっている。また、カード会社、ブランドなどは大型加盟店に対し、積極的にPOSのIC化を推し進めている。

 

経済産業省が発表した「クレジットカード決済の健全な発展に向けた研究会」の中間報告でも、「2020年までに流通しているクレジットカードの100%IC化を目指す」と発表されている。また、決済端末についても「IC端末の導入促進を図り、2020年までに100%IC化を目指す」とされている。特に、大手流通事業者のPOS端末におけるIC対応の促進を図るということだ。さらに、ATMについてもIC対応を進めるよう、ATM設置者に求めていく。また、2014年末に日本クレジット協会が、2020年にICクレジットカード化100%を目指すと決定したことも追い風となるだろう。

 

例えば、Visaでは、偽造によるカードの不正利用の削減を目指し、ICカード取引の国際標準規格(EMV)仕様への投資を奨励し、さまざまなセキュリティ施策を牽引してきた。取引の偽造詐欺に関して、アクワイアラやイシュアのうち、EMV対応を行っていない会社に対してライアビリティー(債務責任)を課す「EMVライアビリティシフト」については、地域ごとの商習慣を反映し、2014年より順次導入が進められている。2015年10月には、IC化が遅れていると言われている米国のPOS取引、日本の国内POS取引が新たに対象となり、これをもって全世界のPOS取引でのEMVライアビリティシフトがほぼ完了する節目となる。

 

米国では、2013年末に発生したカード情報漏洩事件を機に、偽造およびカードを提示しない非対面での「CNP(Card Not Present)」に対する対策が急務となり、EMV化の動きが加速している。2014年10月にはオバマ大統領がカードセキュリティに関する「大統領令」に署名。これは、政府として積極的にチップ&PINを推進し、政府調達カードや政府関係施設(国立公園)で、ICカードによる決済とPINの入力を求めていくという。また、ホーム・デポ、ターゲット、ウォルグリーン、ウォルマートなどでもEMVへの対応がスタートしている。米国では2015年12月において、クレジットカードで43%、デビットカードで21%、加盟店端末で17%のEMV化が行われている。

▲米国のEMV化の状況(Visa)

▲米国のEMV化の状況(Visa)

韓国では、2013年3月に政府がチップ付きカード発行の義務化を施行し、2014年2月に完了。ATMについても2015年3月に国内取引のチップ対応義務化が施行された。また、韓国信用融資協会(Crefia)より、「Credit Card POS terminal Information technology protection guideline」が4月29日に発表され、同7月から有効に、2018年7月にすべての加盟店でのIC決済が必須となる予定だ。

 

「3-Dセキュア」はワンタイムパスワードを検討するイシュアが増加
クレジット取引セキュリティ対策協議会が活動

 

一方、クレジットカード業界では、非対面におけるペイメントカード取引の対策として、「秘密情報による本人確認」「カード券面情報による本人確認」「属性情報による本人確認」の3つの導入を加盟店に勧めている。

 

まずは、「秘密情報による本人確認」で、Visa、MasterCard、JCBなどが推進する本人確認手段の「3-D セキュア」はこれに当たる。これは、クレジットカードなどのペイメントカード情報を入力する際に、カード番号と有効期限に加え、パスワードを入力する方法になる。最近では、三井住友カードのようにワンタイムのパスワードを利用して認証を行うケースも登場している。また、American Expressが「American Express SafeKey」を国内で提供開始したことも追い風となるだろう。

▲ジェムアルトは、動的CVV/CVCソリューショ ンを提供

▲ジェムアルトは、動的CVV/CVCソリューションを提供

次に、「カード券面情報による本人確認」では、カード番号と有効期限に加え、セキュリティコードを入力する方法を指す。最後に、「属性情報による本人確認」で、カード番号と有効期限に加え、任意の属性情報を入力して認証を行うスキームとなる。現在、属性情報による認証はソニーペイメントサービスの「e-SCOTT 認証アシストサービス」などが挙げられる。

 

また、AVS(Address Verification Service)認証も一部のクレジットカード会社がシステムを提供。北米では、ガソリンスタンドなど、不正利用が多い一部の加盟店で郵便番号の入力が求められることがある。また、非多面の取り引きでも導入している加盟店は多い。国内では、ソニーペイメントサービスがAVS認証によるサービスを提供している。

 

認証強化とともに、情報漏洩対策も重要となる。近年は、加盟店のECサイトからカード会員情報が漏洩する事件が目立つ。そのため、ECサイトなどの加盟店側で、カード会員情報を所有せず、決済代行事業者などに預ける「非保持サービス」(画面遷移型)を導入するケースが増えている。また、加盟店自身がクレジットカード情報に置き換わる別の数値(乱数)で情報処理を進めるトークナイゼーションを採用するケースもある。トークナイゼーションは、データベースの暗号化以上に強固なセキュリティ技術であると言われており、米国では広く採用が進み、情報漏洩防止対策の新技術として注目されている。

 

また、不正と思われる取引パターンをルールとして事前に登録することで、それに合致する取引を検知するとリアルタイムに取引停止し、事業者に通知するサービスを提供する企業もあり、航空会社や家電量販店などが採用している。

 

加盟店自身の情報漏洩対策強化としては、「PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)」準拠が挙げられる。PCI DSSは、Visa、MasterCard、JCB、American Express、Discoverの国際ペイメントブランド5社が定めた、ペイメントカードのセキュリティ基準だ。国際ブランドが付与されたカード情報を処理、伝送、保存する加盟店、サービスプロバイダが対象となる。カード決済に関するデータ保護が目的とされている。

 

カードセキュリティについては、クレジットカード会社のみならず、学識経験者、経済産業省、国際ブランド会社、加盟店、機器メーカーなど幅広い関係者から構成された協議会である「クレジット取引セキュリティ対策協議会」の活動が挙げられる。同協議会では、「日本再興戦略」改訂2014(2014年6月24日閣議決定)等に基づき、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催等を見据えたキャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性の向上を図るため、世界最高水準のクレジット取引のセキュリティ環境を整備することを目的に活動しており、2016年2月23日にはアクションプランが公表された。

 

広がりを見せるインターネットの決済手段
ECサイトを利用するユーザーのニーズに合ったサービスが求められる

 

インターネットにおける決済手段は、クレジットカード、ID決済、電子マネー、ネットワーク電子マネー、インターネットバンキング、Pay-easy(ペイジー)、代引き、コンビニ払い、キャリア決済等が挙げられ、加盟店は自社のユーザーのニーズに合ったサービスの導入が求められる。

 

最も利用されているのは、クレジットカード決済だ。EC決済を行う加盟店と決済事業者との契約形態には「直接加盟店契約」と「包括加盟店契約」がある。直接加盟店契約はクレジットカード、金融機関、電子マネー、コンビニ決済などに関して、サービス提供者との契約をそれぞれの事業者と個別に行う。売上代金の入金は各事業者から個別に行われる。一方、包括加盟店契約はサービス提供者との契約を決済代行事業者が一括して代行する契約形態だ。審査、加盟店契約、決済・入金処理までを決済代行事業者が行う。

 

例えば、主要な決済代行事業者が集うEC決済協議会では、改正割販法で議論に挙がっているブランド禁止のクロスボーダー取引について、日本のアクワイアラ(加盟店管理を行うカード会社)との契約に基づいた運用を行うことが求められるため、それに遵守した形での運用を各社が行うという。また、厳格な加盟店審査が求められるが、その部分は個社ノウハウに依るところが大きく、統一的な基準を作るのは無理があるため、法律にしたがって厳格に実施するという意識合わせをしている。加盟店がEC決済サービスを導入する際には、日本の商習慣にあったサービスを提供し、厳格な加盟店審査を行っているかを見極める必要があるだろう。

 

また、近年は、越境ECの手段として、多通貨決済サービスを導入するケースも見受けられる。外貨決済にはMCP(マルチ・カレンシー・プライシング)とDCC(ダイナミック・ カレンシー・コンバージョン)の2種類がある。MCPは、事業者が外貨通貨の販売額を定めることができ、日本円と外貨に対応可能だ。

 

電子マネーは、FeliCaカードやFeliCa対応携帯電話、FeliCaポートが付いたパソコンやFeliCa対応読み取り端末にかざして行うインターネット決済である。最近ではFeliCa搭載携帯電話を活用した「楽天Edy」、「iD」などの決済も行われている。

 

ネットワーク電子マネーは、運営事業者がインターネットのネットワーク上で決済情報を管理する方法となる。ウェブマネーの「WebMoney」、ビットキャッシュの「BitCash」、NTTスマートトレードの「ちょコムeマネー」、NTTカードソリューションの「NETCASH」などが有名なサービスだ。ユーザーは、コンビニエンスストアなどで、ID番号が入力されたカードやシートを購入する。カードやシートには基本的に16桁のID(数字やひらがな)が入力されており、利用者は加盟店のWebサイトでIDを入力することにより、チャージ額を引き落とし、決済に利用する。

 

インターネットバンキングは、Webを介した銀行取引のサービスとなる。モバイルバンキングは携帯電話のインターネット閲覧機能を利用した銀行取引サービス。主なサービスとして振込、口座の入出金明細の表示、残高照会などが行える。24時間インターネットで取引ができるため、利用者は窓口へ出向かなくても済む。

 

「Pay-easy」は、税金や公共料金、各種料金などの支払いを、金融機関の窓口やコンビニのレジに並ぶことなく、パソコンや携帯電話、ATMから支払うことができるサービス。「Pay-easyマーク」が付いている納付書・請求書の支払いや、支払い方法としてPay-easyが選択できるサイトでの料金の支払いなどに利用できる。

 

インターネット決済では、宅配便の配達時に料金を回収する「代金引換(代引き)」が利用されているケースが多い。決済手数料は、原則的に利用者の負担となる。手数料はインターネット決済の購入金額などにより設定される。宅配業者によっては、配達時に専用のハンディ端末を利用して、クレジットカード、デビットカードなどの決済に応じるケースもある。

 

コンビニ前払いは、コンビニで先に料金を支払い、決済されたことが確認できてから商品やチケットを発送もしくは受け取ることができる。クレジットカードを持てない未成年者やクレジットカードを保持できない層でも利用できる。

 

最近では、「後払い」によるコンビニ決済の導入企業が増えている。ネットプロテクションズの「NP後払い」をはじめとして、複数の企業がサービスを提供している。利用者が実際に商品を受け取ってから支払いできる点、事業者が立替払いを行うためEC加盟店への入金が保証される点などにより、アパレルなどの物販サイトを中心に導入企業が加速している。また、ジャックスは、後払い決済サービスに信販・カード業界では初めて参入。さらに、ヤマトクレジットファイナンスとヤマトフィナンシャル、佐川急便と佐川フィナンシャルの物流系企業も後払いの提供を行っている。

注目サービス

GOLD

株式会社富士通ミッションクリティカルシステムズ

日本カードネットワークの「リアルタイム口座振替サービス」に対応する
パッケージ製品を提供
短期間・低コスト・高品質でのクレジット決済システム導入を実現化

大日本印刷株式会社

ID情報と決済情報を連動した新たなマーケティングを展開へ
「DNPマルチペイメントサービス」がいよいよ稼働

株式会社富士通ミッションクリティカルシステムズ

POSA導入を短期間・低コスト・高品質にサポートする「やごやさん」
パッケージからクラウド型までサービスのバリエーション広がる

SILVER

株式会社NTTデータ

多彩な決済機能を提供するクラウド型
総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」
決済から売上管理まで、幅広く対応できる画期的サービス

株式会社NTTデータ

CAFISがインバウンドのためのトータルソリューションを支援
アジア圏の決済、多通貨決済、免税、カード決済連携送客まで提供

株式会社リクルートライフスタイル

「モバイル決済 for Airレジ」で小売業や飲食業を支援
中国最大級の決済アプリ「Alipay」に加え、「LINE Pay」への対応も可能に

ビザ・ワールドワイド

接触・非接触のEMV化、プリペイド、BtoB専用決済システムの普及に注力
2020年のキャッシュレス化に向け、世界に広がるVisaのサービスの国内利用促進を図る

セイコーソリューションズ株式会社

アプリケーション、端末、センターサービスの三位一体で
2020年に向け、加盟店の多様化する決済業務を支援

株式会社ネットプロテクションズ

「NP後払い」のノウハウをB to B企業に適用した「FREX B2B後払い決済」
現金集金を撤廃できる訪問サービス向けの「NP後払いair」も提供

BRONZE

ヤフー株式会社

「Yahoo!公金支払い」のふるさと納税の取り扱いが好調
利用者・自治体双方の利便性を高め、地域活性化を継続的に支援

「リテールテックJAPAN」「SECURITY SHOW」

ソニーペイメントサービス株式会社

高速で安定したレスポンスかつ高稼働率の決済代行サービス「e-SCOTT」
独自の「認証アシストサービス」で加盟店のセキュリティリスクを軽減