EC・通販動向

 成長続く通販・EC市場、7兆円の大台に王手
「ZOZOTOWN」に倣い複数のネット企業が長期後払いを導入 

 通販・EC業界は2017年も成長が続き、ついに7兆円市場を射程内に捉えた。トップを独走するアマゾンをはじめ、アスクルなど複数のBtoB企業や大手テレビ通販企業などが市場を牽引した。ファッションECモールの躍進も顕著で、ECサイト「ZOZOTOWN(以下、ゾゾタウン)」で“ツケ払い”を導入したスタートトゥデイの売り上げがさらに拡大し、同様の長期後払いで追従する企業も登場している。さらにプライベートブランド(PB)立ち上げやリユース事業への進出、スマホアプリの活用など、各社は新たな打ち手で成長戦略を描く。 

通販研究所 渡辺友絵

伸び率も安定し18年連続の成長

 

通販・EC業界における売上高規模(物販)については、(公社)日本通信販売協会(JADMA)が2016年度の集計数値を2017年8月に発表しており、前年比6.6%増の6兆9,400億円と18年間の連続成長となった。金額ベースでは4,300億円の増加で、伸び率もここ3年連続で上向くなど安定成長を維持する。直近の売上高規模の数字は2018年1月に発表された業界紙2社によるものとなるが、「通販新聞」が前年比7.7%増の6兆7,131億円(上位300社)、「日本流通産業新聞」が同3.3%増の6兆5,145億円(上位400社)で、いずれも7兆円市場に王手をかけた順調な伸びとなっている。

< 2017 年売上高ランキング>

 

トップのアマゾンやBtoB、大手テレビ通販、家電系ECが牽引

 

トップを独走するアマゾンは送料無料の有料会員向けサービス「プライム」の伸張などもあり、業績をさらに拡大させた。さらにここ数年勢いがあるアスクルをはじめ、ミスミグループ本社や大塚商会、MonotaRO、カウネットといったBtoB企業がそろって増収で上位にランクイン。ジャパネットホールディングス、ジュピターショップチャンネルなどの大手テレビ通販企業も2桁増でトップ10に定着している。ヨドバシカメラを筆頭に、家電系通販も前年に続き好調な伸びとなった。一方で、千趣会やディノス・セシールなどカタログ事業を手がける老舗総合通販は一部を除き苦戦が続く。

 

ECファッション業界で加速するPB立ち上げやリユースへの参入

 

「ゾゾタウン」をはじめとするECファッション業界では、プライベートブランド(PB)の開発・導入が加速している。スタートトゥデイが今年度中の発売を目指す初のPBについては、すでに2017年11月から採寸用ボディスーツの無料配布を始めており、ECに限らずアパレル業界全体が注目する。採寸情報をもとに究極のフィット感を実現できる衣料品を受注生産で手がける予定で、老若男女をカバーするアパレル事業として収益の柱にしていく考えだ。

 

20~30代の女性を軸にECファッションを展開するマガシークは、総合商社のモリリンと提携してPB開発に取り組み、NTTドコモと共に運営するネットショップ「dファッション」で2017年12月に販売を開始。今後はアパレルブランドとも提携しながら新たなPBを扱い、新規事業として成長させていく。

 

実店舗を運営する丸井も婦人靴のPB事業に参入し、自社店舗やイオンモールなどに試着可能な期間限定イベントストアを設置。“おしゃれで楽”がコンセプトの「ラクチンきれいシューズ」の名称で展開し、小刻みな16サイズのサンプルを展示した。試したあとは店員が店舗の専用タブレット端末で注文し、同社のEC倉庫から発送するという“店舗→Web”のOtoO施策で対応する。靴以外にも女性・男性向けのパンツをPBとして販売している。

 

アマゾンにも、成長が著しいファッション分野のPBを強化する動きが見られる。今春をめどに都内に衣料品などファッション商品専用の大規模撮影スタジオをオープンし、商品の撮影体制を整備するとともに商品画像精度の向上につなげたい考えでいる。新スタジオは4階建て・総床面積7,500平方メートルと他国スタジオに比べても最大規模で、従来のジュエリーなどに加え衣料品のPB展開を視野に入れている。

 

競合がひしめく衣料品のEC業界では低価格路線や値引きが主流になっており、収益を圧迫している。自社独自のコンセプトに基づくPB商品であれば競争力が見込め適正価格での販売や顧客育成が可能になるため、体力があるファッション系企業では今後PBへの取り組みが進みそうだ。

 

またECファッション市場では、二次流通のリユース事業である中古衣料販売も活性化している。スタートトゥデイは子会社のクラウンジェルを通じ、「ゾゾタウン」で販売したブランド古着を買い取って再販する専用サイト「ゾゾユーズド」を運営。ファッション感度が高くトレンドに敏感な20~30代のユーザーは衣料の買い替え需要も高いことから、こういった顧客が軸であるスタートトゥデイとの親和性は高かったようだ。

 

同社が二次流通向けに導入した「買い替え制」では、「ゾゾタウン」で商品を購入する際に過去に買った商品を画面の下取り商品一覧から選ぶと、提示されている下取り金額を差し引いた金額で新商品を購入できる。この手法は「ゾゾユーズド」に商品を供給する役割を担うとともに、自社の顧客を循環させ固定化につなげるというメリットを生み出している。

 

マガシークも2017年、アウトレットECサイト「アウトレットピーク」に古着の販売コーナーを設けた。アウトレット商品の在庫不足をカバーし品ぞろえを充実させることも目的の1つで、古着売買事業者のベクトルグループと提携し査定や買い取り業務を委託している。ファストファッションのクルーズもやはり2017年からベクトルグループと組み、携帯アプリを通じて中古衣料の専門店「ショップリストユーズド」を展開する。もともとはCtoC形式のフリマアプリとしてスタートしたが、ベクトルグループと提携することで買い取りも強化し、BtoC分野と両輪で展開する。

 

こうした中古衣料マーケットへの参入が加速する背景には、メルカリやコメ兵など中古品を扱うCtoC事業の浸透や成長がある。消費者の購買行動や価値観が変化し、中古品購入への抵抗感が低下したと見られる。

 

インスタグラムやAIなどテクノロジーを販促に活用

 

スマートフォンの浸透などを背景にEC市場ではテクノロジーの進化も目覚ましく、さまざまな取り組みが進んでいる。話題をさらったのは前項でも触れたスタートトゥデイの「ゾゾスーツ」で、ニュージーランドにある出資先のソフトセンサー開発企業と共同開発。伸縮センサーを内蔵しており、“服が人に合わせる時代へ”のキャッチコピー通り身体の1万5,000カ所を瞬時に採寸できる。体型データはスマホの「ゾゾアプリ」に保存され、ユーザーはEC最大のネックであるサイズ不安に悩まされることなく商品を選べるというものだ。発売を予定する自社PBの購入時に“究極のフィット感”を実現できるツールで、無料配布の注文は申し込み開始日だけで23万件にのぼった。

スタートトゥデイが無料配布する「ゾゾスーツ」(同社ホームページから)

昨年の流行語大賞にも選ばれた「インスタ映え」は、画像共有SNSのインスタグラムに投稿するために写真にこだわる現象から生まれた言葉だが、スマートフォンのインスタグラムをプロモーションに活用する動きも目立つ。

 

楽天はインスタグラムを活用した店舗向け販促支援を強化。「楽天市場」のファッション系店舗がインスタグラムのユーザーに商品を提供し、コーディネート画像を投稿してもらう取り組みなどを仲介する。ファッション商品の口コミやレコメンドなどに影響力が強い「インフルエンサー」を募集し、インスタグラムの販促に参加したい店舗には個別にハッシュタグを用意。店舗のインスタグラムに投稿・エントリーしてくれたインフルエンサーの中から、自社商品のイメージに合った人を各店舗が選びインスタグラムで活用する仕組みだ。

 

スマートフォンで個人間取引アプリを提供するメルカリが2017年7月に開始した「メルカリチャンネル」は、写真などの静止画像だけでは分かりにくかった商品の特徴をライブ動画で説明・訴求できることに加え、販売者と購入者の双方向コミュニケーションが可能なツールとして好評だ。“ライブフリマアプリ”と銘打ち、購入者は配信される商品画像を見ながら、リアルタイムで販売者にいろいろ質問することができる。販売者の声や姿も分かるため購入者にとっては安心感につながり、売り上げを底上げする。さらに2017年12月からはEC・通販企業にも「メルカリチャンネル」のライブ配信機能を提供し、衣料品や食品などライブコマースと親和性が高い十数社が参画している。

「メルカリチャンネル」のコミュニケーション画像(メルカリホームページから)

またメルカリはAIの活用にも着手し、ブランド品に特化した個人間取引アプリの配信をスタートさせている。AIを活用して撮影した画像から商品のブランド名やカラー、デザインなどを判別し、商品情報を自動で入力する機能を搭載。市場価格データなどに合わせて自動査定を行い、売れやすい適正価格を表示する仕組みだ。出品者はこれまで商品のどこにポイントを置いて撮影したらよいかということや、適正な市場価格が分からないという悩みがあった。購入者も偽ブランド品や不正取引に関する不安を抱いていたが、最先端技術を使ったAIの導入で購入ハードルが下がり、取引の活性化につながることになる。

 

そのほかにも多くの企業がAI活用に乗り出しており、高島屋グループのWebサイト「タカシマヤファッションスクエア」ではスマートフォンやタブレットでの閲覧を重視したレコメンドにAIを導入。単に売れ筋や人気商品を薦める手法ではなく、深層学習機能に基づき、商品を閲覧するたびにレコメンド内容が変化するリアルタイム特性を取り入れている。

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